ICU生のスウェーデン留学日記

2015年8月からスウェーデンのヨーテボリ大学に交換留学中のICU生。

オタクの祭典 inスウェーデン

Hej hej!
エッセイやらグループプレゼンやらフィールドワークやら就活やら…何かとやることがあってなかなかブログの方まで手が回らなかったんですが、2月にスウェーデンのLinköpingという都市で開かれたNärConというオタク文化イベントにボランティアスタッフとして参加したので、いろいろと忘れてしまう前に書いておこうと思います。

ヨーテボリからバスで約4時間ほどのところにあるLinköpingで開催されたNärConはオタク向けのイベントなわけですが、日本最大級のオタクイベントであるコミックマーケット(コミケ)とは規模も内容も全く違うものでした。
簡単に言うと、日本のコミケが同人誌の売買を主な目的としているのに対し、NärConは共通の趣味を持つ人同士の交流を目的としたイベントって感じの印象を受けました。

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入り口こんな感じ。夜に撮ったので人は全くいません(笑)

このイベントの目玉企画がコスプレ大会ということもあり、参加者の多くが様々なコスプレをしています。自分のお気に入りのキャラのコスプレをしている人を見かけたら声をかけて写真を撮らせてもらったり漫画やアニメについて語り合うのがこのイベントの醍醐味のひとつとも言えますね。
実際私も空き時間に会場内を歩いていたら好きな日本のゲームキャラのコスプレをしている人がいたので写真を撮らせてほしいとお願いしたら「あなたこのゲーム知ってるの!?私の周りに知ってる人全然いないからすごい嬉しい!!」とものすごく喜ばれました。しかも今年の夏に日本に来るらしく、時間を合わせてまた会おうということになり不思議な縁を感じましたね。

いろんな人と話す機会があって楽しかったんですけど、上に書いた通り日本のコミケと随分違うなという印象を受けたということを仕事のチームリーダーに話したら、彼曰く、スウェーデンはそもそもオタク人口が日本と比べると圧倒的に少ないので共通の趣味を持つ仲間を見つけるのが難しいうえに、仮にネットなどを通して知り合えたとしても北のほうに住む人と南の方に住む人では実際に顔を合わせるというのが難しいらしいんです。だからNärConみたいなイベントがオタク同士の交流の場として機能しているんだとか。
日本でも例えば関東と関西の人では気軽に会うのは難しいんじゃない?って思うかもしれないですけど、日本はスウェーデンより交通機関が発達しているのでスウェーデンと比べると会うのは比較的簡単なのかもしれないなとこっちで半年生活していて思いました。
あと日本では共通のジャンルにハマってる人同士が集まるオンリーイベントがけっこう頻繁に開かれたり、Twitterが浸透してるおかげで意外と普段からオタク同士の交流って行われてると思うんですよね。そういう「交流の気軽さ」みたいなものがスウェーデンのオタク環境にはまだないのかなと思いました。

あと単に仲間を見つけるだけじゃなくて、NärConはオタクとしての自分を受け入れてもらえる「居場所」のような場にもなっているんだとか。
「日本ではオタク文化は社会的に広く認知されているしオタクの人たちもオープンだよね。でもスウェーデンではまだまだ浸透していないしオタクも少ないからいじめとまではいかないまでも、社会に属していない、疎外感みたいなものを感じているオタクが多いんだよ。でもここに来れば周りはみんなオタク趣味を持っていて普通とは違う自分を受け入れてもらえる。自分も『仲間』の一員だって感じられるんだよ」とチームリーダーが言っているのを聞いて、あーなるほどねと納得すると同時に、「日本のオタクがオープンで社会に受け入れられている」という評価には賛同しかねるかなって感じですね(苦笑)
たしかに日本のオタク人口はスウェーデンとは比べ物にならないくらい多いしメディアを通して多くの人が日常的に目にしているけど、社会に受け入れられているかというと、うーんて感じですよね。
まぁ完全否定はされてないけど必ずしも肯定的に受け入れられているわけではないかなというのが個人的な印象。

社会にオタクが受け入れられているかどうかはともかく、日本のオタク環境がスウェーデンと決定的に違う点は、やはり数が多いという点だと思いますね。数が多い分、オタクをターゲットにしたコンテンツも増えるし、イベントだったりオンライン上の交流型企画だったり、自分以外にも同じものを好きな人が沢山いるってことをオタク自身が認識できるんですよね。だから「NärCon」みたいなオタクの交流の象徴になるようなイベントをわざわざ企画する必要もないわけで。
ていうか、ジャンルがそもそも多いし、そういった各ジャンルに属しているオタクの数がどれもそれなりに多いから全ジャンルカバーしてるNärConみたいなイベントはうまく機能しないんじゃないかなとか思ったり。それよりジャンルごとのオンリーイベントみたいな内輪ノリの小規模なイベントのほうが交流の場としては機能する気がします。

さて、コスプレ大会が目玉企画のひとつだと書きましたが、NärConのコスプレ大会は毎年テレビで生中継されるほど大規模なもので、参加者の気合の入れ方も相当なものなんです。
もちろん衣装は全部手作りだし、ただコスプレをした人がステージに上がるだけじゃなくて、アニメや映画のワンシーンを再現したり歌を歌ったり踊ったり、それぞれパフォーマンスを披露します。
残念ながら私は仕事のシフトが入っていてパフォーマンスが行われるアリーナで見ることはできなかったんですけど、仕事場からステージの一部が見えたので仕事しながらチラチラ見てました(笑)
個人的にはGame of Thronesのコスプレパフォーマンスが一番盛り上がっていたかなと。たしか優勝した人は違う人だった気がするけど…

大会参加者に限らずイベントに参加しているコスプレイヤーさんはやっぱりキレイな人多いですね。日本人的欧米人への憧れみたいなものもある気がしますが、北欧の人ってめっちゃ背が高くて腰の位置も高いから単純に見映えが良くてかっこいい(笑)
ホビットのスランドゥイルのコスプレとか似合いすぎでしょ!って感じでした。
※スランドゥイル=映画ホビットに出てくる金髪長身のエルフの王様

余談ですが、NärCon開催期間中は会場近くのホテルに泊まってたんですけど、このホテルのオーナーがそもそもオタクらしくて部屋もちょっと変わってて面白かったです。
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私が泊まってた部屋はこんな感じ。
壁がスターウォーズ!…だよね?(笑)スターウォーズを最後に見たのが何年も前なので若干自信ないんですけどたしかこんな感じだった気が…
まぁそれはともかく、ぶっちゃけこの部屋落ち着ける雰囲気ではなかったです(笑)
他の宿泊客もNärCon参加者っぽい人が多かったです。会場まで徒歩12分だしね。立地最高。

5月にはヨーテボリでもConfusionというNärConと同じようなオタクイベントがあるらしいのでそれにも参加したいなぁと思ってます。

NärConやConfusionのような大規模なイベントが開かれるくらい日本のオタク文化がスウェーデンでも受け入れられているというのは驚きであると同時に日本人として嬉しくもあります。
オタク文化に限らず日本食とか日本の映画に興味を持っているスウェーデン人はわりと多いみたいで、日本語学科がある大学がいくつもあることからも日本に対する興味関心の高さが分かりますね。
ただ、スウェーデンにはスウェーデンの文化があり、社会構造も違うので当然日本の文化は多少違う形で受け入れられ浸透しているのも事実です。寿司が高級なものではなく完全にファーストフードとして認知されてたりとかね。

もともと日本の文化を海外に発信したり、海外の文化を日本に取り入れる「文化の橋渡し」的なことを将来やりたいと思っていたんですけど、NärConのようなイベントに参加したりスウェーデン人と話したりする中で、お互いの文化や考え方の違いが見えてきて、食べ物だったりマンガだったり、何かをローカライズするときはそれが

どのように現地で受け取られるのか?(ネガティブな印象を持たれるのかポジティブな印象を持たれるのか)

どうしたらうまく現地で受け入れられ広まるのか?

ということを考える必要があり、そのためにはやはりお互いの文化だったり価値観の違いを知ることが重要だなと改めて思いました。
まぁ月並みな考えですけどね。
でも実体験なしで考えて出した結論と自分の経験に基づいて出した結論では、なんだろう、自分の中での納得感が違ってくるというか。説得力みたいなものが上がる気がします。
昔から自分で見て、聞いて、触れて…みたいな、実体験を通してしか何かを納得して受け入れることができなかった人間なんで(笑)
だからスウェーデンでの生活を通して得られる情報は自分にとってスウェーデン文化・日本文化を理解するうえで重要不可欠なわけで、これだけでも留学した甲斐はあったのかなと留学7ヶ月目にして思いました。

それにしても10ヶ月って短い。もう本当に短い。あっという間です。留学の意味についてごちゃごちゃと考えてる間に7ヶ月経ってしまうんですよ!!(笑)
残り短い留学生活をいかに充実させるか。とりあえず何事も行動あるのみ!かな。
帰国するときに「目一杯スウェーデンライフを満喫した!」って言えるようにしたいですね。

それでは、今回はこのへんで。
Hej då!